ワケありSS! 【不定期更新】

「では行ってまいれ」


「了解っ」



お母さんの言葉に元気良く返事をして、立ち上がり廊下に出る。

足音を立てないようにお兄ちゃんの寝ている奥の間へ駆けていき、そろりと静かに襖を開いた。

いつも学校で寝泊まりしているお兄ちゃんが、本宅で過ごすのは久しぶりだ。

だからと言うかなんと言うか。

こうしてお母さんと私に寝起きドッキリを仕掛けられても仕方ない。

ゆっくり慎重に近付いて、和室には少し違和感のあるベッドに歩み寄る。

妹の目から見ても見目麗しい彼は、今日も無防備に秀麗な寝顔を晒していた。

…寝顔のくせにそのクオリティーってなんなの。

不公平だなと思いつつ、私は自分の腕に抱いているぬいぐるみを見る。

白くてもこもこの、愛らしいテディベア。

これを眠っているお兄ちゃんの腕に抱かせて、デジカメで写真を撮るというのがお母さんに課せられたミッションである。

ちなみに撮った写真は、このあと岬先輩に送信される予定だ。



「……、」



息を詰めて、テディベアをお兄ちゃんに近付ける。

…あれ、添い寝ならまだしも、抱かせるって結構難しくない?

起きないでねと胸の内で願いながら、そっとお兄ちゃんの腕に触れた瞬間。



「わ…っ!?」



手首をぐっと引っ張られて、ぽすっと勢い良くベッドに突っ伏す。

寝呆けているらしいお兄ちゃんは、目を閉じたままぎゅうっと私を抱き締めた。

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