Freedom -fourth- 【完】



更衣室に駆け込み、急いで着物を着替える。

厨房で洗い物をしている源さんにも挨拶そこそこに、

まるで逃げるかのように割烹屋を出て、タクシー乗り場に向かっていた。


その間ずっと私の心臓は早い鼓動を刻み、手に汗が滲む。


例えるなら、ホラー映画を見たあとの緊張感と同じ。


別に怖いことを言われたわけでも、されたわけでも無いのに、恐怖感が後からじわじわと沸き起こる。


鬼ング――…、龍黒会を取り仕切る組長は、

私が当初想像していた人物像とは異なり、随分紳士的だった。


なのに、こんなにも怖いって思うのは……、


お付きの人達や夏樹さんが、言葉少なく物静かにお酒を飲み、


表情さえも変えなかったこと。


それは、組長の前だから。


それが、見た目どんなに普通のおじさんであっても、

普段強面の男の人達をも黙らす存在なのだと、

物語っていた。


――…夏樹さんが余り笑わない理由も、


そういう環境に常日頃身を置いているからなのだと。


わ、私、


鬼ヶ島上陸出来る根性……、


無いと思う。

(根性でどうにでもなるもんでも無い)


って、思ってたのに――!?






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