Freedom -sixth-【完】



「このシチュエーションで、死体の話とかいいからっ!!!」


「…――死んだらよ。マジ終わんだなって思ってよ?」


「は?」


「――うちじゃねぇけど。三次団体の組員だ……。銃痕あったってな……。そいつの女がよぉ、キツネババァの知り合いらしい」


ひょぉぉぉぉおおお~。


背筋を冷たい風が撫でた。


夏樹が家に関わる話をするのは、本当に珍しい。


が……。


それ、必要な話題!?


「……そう」


「女、腹にガキもいるつって……。死んだら責任も取れねぇよなぁ……?」


お腹に赤ちゃんいて、これから家族で幸せになろうってときに――銃殺されたとか……。


私の気持ちと一緒に地平線に沈む夕日が、まるで弔いのように見えて来た……。


心の中で手を合わせる。



「兎に角っ、夏樹は長生きしてよっ!?」


「――生きる死ぬっつーのは、約束出来ねぇだろ?」


「――え?」


「誰でもそうじゃね?」


夏樹の環境とか、そういう意味合いでは無いと言いたかったのだろう――。



でも私はこの頃から、漠然と生と死について考えるようになった――…。




8月――私の売り上げは伸びきらないまま、お盆休みに入り……、

私は遠出する気分になれず、最初の年とその翌年に行った海に夏樹と1泊した。


9月に入り、季節は秋へと変わる。



そして、10月初旬――…。


緊急速報が流れた。


バリ島の繁華街クタ地区で、爆発事件発生。


観光客を含む200数名の命が奪われる惨事だった――…。


イスラム教徒の多いインドネシアで、唯一ヒンドゥー圏のバリ島が、イスラム過激派の標的となっているとのこと。



紫さんと私が旅行したのは、同年の6月――クタ地区も訪れている。


夏樹が心配していたことが、現実となった瞬間だった――…。








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