Freedom -sixth-【完】



洗濯だけ終えて、家を出ると丁度夕方――5時過ぎなら黒服さんが出勤してるはず。


電車に乗り、いつもFriendsに向う道と同じ通りを歩く。


名刺の住所を頼りに、同じようなビルを1軒、1軒確認すると――…、

Friendsから然程離れていない5階建てビルの3階、Clun綾子の看板を見つけた。


まだ早い時間帯、ネオンの灯っていない看板を目印にエレベーターに乗り込む。


なんだか、少し緊張した。


お父さんの名前を言えばいいんだろうか?


いきなり訪れて、迷惑では……?


エレベーターを降り、静まった3階フロアには数件のお店が並んでいる。


その1つ、木製のドアにClub綾子の文字。


黒服さんしか居ないなら、伝言だけ告げてまた戻ってくればいい。


ドアを軽くノックするが、中からは何も反応が無い。


えっと……、


誰も居ないのかな……?



軽くドアノブに手をかけると――…、カチャっと扉は開いた。



誰か居るんだ?


遠慮がちにそーっと中を覗く。


「あのー……」


店内は薄暗く、フロアにまだ照明は灯っていない。


「あのー」


勝手に入ることに気が引けて、扉だけを少しずつ大きく開けると――…、


「はい?」


――あ。


お店の奥、バーの灯りの下に女の人の姿が浮かぶ。


綾子……さん?


「営業前に、す、すみませんっ」


「えぇ?」


おしぼりを畳む手を止め、真っ直ぐに私を見詰めている。


「連絡せず突然来てしまったんですけど、○○(私の苗字)の……、娘……です。開店前のお忙しい時間帯に申し訳ないです……」



そこまで私が言い終えると、綾子さんらしき女性が一瞬無言で目を見開いた。


や、やっぱ、事前に連絡入れてから来るのが常識だよね!?


いきなり私が来て、驚くのは無理も無い。



「……啓ちゃんの……、娘……さん?」



父の名前は、啓二。


幼馴染らしい呼び方だと思った。





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