Freedom -final-




……―――――――――――


―――――――――――


―――――――……



「あんた、何それ?」


香菜ちゃんの怪訝な視線の先――、ゴミ袋のついでにウォッカとクランベリージュースを買いに行った留美子ちゃんが、やっと戻って来た。


のだが。


小枝のような細い指先に握り込まれる――、デカい袋。


が、2つ。


え!?


「えー?何かぁ、色々ぉー!後ろのトランク開けてぇー?」


……い、色々!?


って、何!?


「……留美、あんたゴミ袋は?」


「買ったよぉー?」


「そ……」


買い物袋をトランクに積み込み、助手席に乗り込んだ留美子ちゃんを確認して、香菜ちゃんは呆れ混じりの軽い溜め息と同時に車のエンジンをかけた。


・・・・・・・・・・。


どうやらこれもさっき香菜ちゃんが言ってた留美子ちゃんは“集中力が続かない”ってやつらしい……。


デカい袋から推測するに、買い物をしているうちにアレもコレもと目に入り、全部買って来たっぽい。


成程。


留美子ちゃんの○○○○(発達障害)特徴って、そういう感じなんだ?


先程、香菜ちゃんから説明されていたので、妙に納得した。


そして留美子ちゃんが○○○○だと知ったからって特別気になるとか、偏見的な感情は生まれなかったのだが……。


「アキちゃーん、家にお風呂あるー?」


またしても、留美子ちゃんが助手席側から後部座席に座る私に振り向き、唐突な質問したことにやや戸惑ってしまった。


「へ?お、お風呂???う、うん?」


そ、そりゃ、普通あると思うんだけど!?


今時、三畳一間のお風呂無しトイレ無し――、なんて家に住んでる可能性があるとでも!?


へ!?


「そっかぁー!良かったぁー!!!」


「う、うん???」


取り敢えず頷きつつも、テンション高く満面の笑みを浮かべる留美子ちゃんの言う、“良い”の意味は不明だ。


・・・・・・・・・・・。



――大型スーパーの駐車場を出て数分ほど走行すると、留美子ちゃんの住むお城……、コンドミニアムの敷地が車窓から見えた。


海辺の潮風に揺れる緑の木々に囲まれ、太陽の光に反射する噴水の飛沫が花壇に降り注ぐ。


おぉっ!


やっぱ、超ゴージャス!!


ドキドキして来たっ!!!


「留美、暗証番号」


セキュリーガードの在中する小さな建物の横に、車から暗証番号を打ち込めるキーパッドがある。


「#○○○○」


留美子ちゃんが告げた番号を運転席の香菜ちゃんが打ち込むと、大きなゲートがゆっくり開くと――、


「あぁ!すっごいっ!!!」


敷地内の全貌が露わになり、想像通りのキラキラに思わず声が出る。



「アキちゃぁーん。ようこそマイジュエルへ~!」



留美子ちゃんの細く長い両手が優雅に頭上で開く。


その仕草はまるでファッション雑誌の一コマ、モデルさんのポーズみたい……。


って。


ん?


マイジュエル???


「……留美」


「アハハ」


留美子ちゃんが“マイジュエル”と言った瞬間、香菜ちゃんがまた呆れ混じりの溜め息を吐いた。


香菜ちゃん溜め息多いな?


そんな香菜ちゃんの様子に、留美子ちゃんは笑っている。


えっと……?


2人のやり取りはいまいち理解出来なかったが、


マイジュエル――…、


My(私の)Jewel(宝石)


留美子ちゃんはこの豪華なコンドミニアムを称しているのだろうと、私はそう何となく受け取った。







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