地味子ちゃんと恋がしたい―そんなに可愛いなんて気付かなかった!

16.地味子ちゃんに交際を申し込んだ!

木曜日に久しぶりに出勤した。1週間前に飲んだ同期2人が昼休みにそっとやってきた。

「大変な目に遭ったみたいだね、悪かったな、誘って」

「いや、こっちの体調が悪かったのかもしれない、君たちは大丈夫でよかった」

「同じものを飲んで食べていたはずだけどね」

「でもかなりいろいろ飲んだし、いろいろ食べたからね」

「でも、無事退院出来てよかった。俺たちももう若くないから、無理できないな」

「そうだね、さすがに今回の入院は身に染みたよ。でもいろいろなことを考える良い機会になった気がする」

「それならよかった。次の飲み会は来月にでも、お前が十分回復してからにしよう」

僕の元気そうな顔を見て安心して戻って行った。気が置けない奴らだ。同期の仲間は大切にしたい。

それから野坂さんがやってきた。

「入院していたそうね」

「急性腸炎で6日間」

「あなたらしくないわね。少し油断した?」

「そうかもしれない。いや、体力が落ちてきたのかもしれない」

「そうね、私たちはピークを過ぎてこれから落ちて行くのかもしれないわね」

「お互い気をつけよう」

野坂さんが立ち去るのを待っていたように、地味子ちゃんもやってきた。

「もう大丈夫ですか?」

「昨日はありがとう。お陰ですっかり元気になった。お礼がしたいけど、明日の金曜日空いていれば、食事をご馳走したい」

「もう大丈夫なんですか? お気遣いはご無用です。いつもお世話になっていたのでお返しです」

「僕の気が済まないので、どうかな、空いているのなら付き合ってほしい。大事な話もしたいから」

「良いですよ」

「それなら、新橋に和食の店があるから、そこで和食をご馳走しよう。久しぶりにおいしいものを食べたいんだ。和食ならお腹にも優しいので大丈夫そうだから。明日6時半にビルの出口で待ち合わせしよう」

「分かりました。ご馳走になります」

◆◆◆
次の日6時半にビルの出口で待っていると、地味子ちゃんが出てきた。相変わらずの地味なスタイルだ。

「お待たせしました」

「仕事は大丈夫?」

「折角の機会ですから、頑張って終わらせました」

大通りへ出て、すぐにタクシーを拾って新橋へ向かう。以前、仕事で使ったことのある和食の店で、4人ぐらいで会食できる掘りごたつの個室を予約しておいた。

「どうぞ、ゆっくりして」

「良い所を知っているんですね」

「まあ、この年になるとこんな店も知っているってとこかな」

「落ち着いていて素敵です」

「ホテルの高級レストランもいいけど、こんな落ち着いた感じも良いかなと思って。二人で周りに気兼ねなくゆっくり話ができるから」

「でも何を話したらいいか思いつきません」

「何でもいいんだ、米山さんと話していると心が休まるから。料理は勝手に頼んでおいたけど、飲み物は何がいい?」

「じゃあ、折角だから日本酒をいただきます」

「冷でいい?」

「はい」

先付けが運ばれてきて、冷の日本酒もグラス2つと共に用意された。それから、時間をおいて料理が運ばれてくる。

「本格的な和食って初めてです」

「そうなんだ。僕は仕事の席で接待したりされたりで、でも忘年会や新年会や送別会で和食にすると大体ひととおり出てくるけどね」

「でも、初めからまとまって幾つか置いてあるし、こんなに一品ずつでてくることはないですよ」

「ゆっくり話ができるように一品ずつ時間をおいて料理が出されるんだ」

「じゃあ、話をしないといけないですね」

「そんなに無理しなくて自然体でいいよ。そうだな、なんでも聞いていいよ」

「入院したのは初めてだったんですか」

「そうだ。まさかこの年で入院するとは思わなかった。油断した」

「どう油断したんですか?」

「あの晩はまずお酒をいろいろ飲み過ぎた。生ビール、黒ビール、焼酎のお湯割り、日本酒、ほかに水割り」

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