「あの時から俺はずっとー…」
そう言って 切なそうな 顔、しないでよ
そんな 優しく 私の頬に触れないでよ……
″あなたの視線に、泣きたくなる″





いままで一回も男子に女子だと思われたことがなく、


好きな人が出来ても


″一番仲の良い女友達″にしかなれなかった



ぽっちゃり系ガサツ系女子、彼氏無し歴15年の


私、石田 菜々は今年の春、高校に入学した。



″高校でもいままで通りのいつもと変わらない生活を送るんだろうな″



そう、思っていたのにーーー・・・






#1「嫌なヤツ」




高校に入学して2週間がたった。


始めは皆、お互い緊張していてギクシャクしていたけど、2週間たてば皆、仲良くなって


毎日を楽しく過ごしている。



私も直ぐに気の合う友達が出来た。


″橋本 美香″ーーー通称みかりん。


最近はみかりんと一緒に弁当を食べることが毎日の楽しみになっていたりする。



今日も四時間目が終わり、昼休みになったと同時に私はみかりんに声をかけた。


「みかりーん!食べよーぜー!」


「おっけー、ちょい待ち」


「はいよー」



私はみかりんを待っている間に机の上に置いてある物を片付け始めた。


と、感じる視線。


(なんだ……?)


そう思って左に首を傾げると、


一人の男子が私をじっと見ていた。


私も彼を、じっと見つめる。


刹那 、


「フッ」


そう、笑った彼。


ーーもし、これが少女漫画だったら爽やかな彼の笑顔に心を奪われるのかもしれないが、そうはいかない。


しかも、彼の笑顔は″爽やか″なんかじゃなく


バカにしたような笑いだった!


(……なっ!、今私を見て笑った!?)


そう解釈した私は私を見て笑った彼を睨んでから、


「なーちゃーん!食べよー」


「あ、うんー!」


そう私に声をかけてきたみかりんに返事をして


昼ごはんを食べ始めた。



そういえば、さっきの男子、なんて名前だったっけ。


……えーと、ふじ、……藤牧……、涼……?


だったかな。


(よく女子が騒いでるイケメン男子か)


思い出して、顔が歪む。


(なんであんな男子が人気なのか……)


「なーちゃん?どうしたのよ」


「や、何でもない!」


ハッと我に返って止まっていた箸を持つ手を再び動かす。



(まぁ、アイツの事なんでどうでもいいか。)


「てか今度さー…」



ーーーその時も 彼が私を見ていた事なんて、私は知りもしなかった。