隣の席の室井くん②【完】




「そうだな・・・」



やなぎんがそう口を開きかけた時、



「何してんのアンタら二人で」



「さっちゃん」



いつの間にかご帰還なされた女王様が

周囲を見渡しながら
アタシとやなぎんに歩み寄ってくる。



「アイツらは?」



・・・さっきまでの形相は何処へやら。


やけにスッキリとした面持ちをしている。



「翔とイチならコンビニに・・・って、亮介は?」



やなぎんがそう問えば


「あそこ」


さっちゃんが、無表情で
背後を指差す。



その先には
どんよりした面持ちの
疲れ果てたご様子の相沢氏。


「安心しなさいよ。アンタの分までしっかり痛め付けてやったから」



フンっと鼻で笑うさっちゃんを、心底恐ろしいと思った。


・・・一体何があったんだ。



あのいつもご機嫌お気楽なヒャヒャヒャの男が

あそこまで消沈しているだなんて


よっぽど何か恐ろしい仕打ちにあったに違いない。



「あ、帰ってきた」



噂をすれば、


公園入口に両手にビニール袋を抱えた室井くんとイッチーの姿が見えた。



「日吉さん」



アタシに気付いた室井くんが


いつものように
ゆるりとした笑みを浮かべる。




「おかえり」



それに答えるように
アタシも笑みを浮かべた。




「ただいま」




溶けてしまえばいい。


この雪のように、


アタシのちっぽけな不安なんか溶けてしまえばいい。



アタシは手の平の小さくなった雪うさぎを


そっと、木の陰に置いた。




アタシの不安の身代わりに
なるように



その小さな雪うさぎは


ゆっくりと


その姿を小さくしていった。




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