冬、日だまりで【完】

秋、記憶 /早退




 それから、どれだけ時間が経ったんだろう。

 嗚咽をこぼして泣いていたから、酷く喉が痛んだ。

 目も泣きすぎて熱いし、ひりひりする。

 久しぶりに泣いて――泣きすぎて、疲れたし体もだるかった。



――コンコン


「日鞠ちゃん、大丈夫?」

 控えめなノックの後に、ドア越しに聞えてきたのは松本さんの声。

 心配そうな声色に、まだ体の中に溜まっていた何かを、ため息と一緒に吐き出して。
 ゆっくりと立ち上がると、わたしは、ドアを開けた。

「……ごめんなさい」

 眉根を下げる松本さんに心配をかけたことと、知り合いとはいえ、お客様を前に走り去ったこと、更衣室に閉じこもって仕事を放棄したこと。

 諸々をまとめて、頭を下げた。

「いいのよ。チーフがね、早退してもいいって言ってたわ」

「でも……」

「そんな顔じゃ戻れないでしょう?それに、……妹さんたちも心配してたわよ」

 言われて、そういえば日依たちが来てたことを思い出した。

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