星空の下、あなたの隣Ⅲ

8 /×××

ーーーside






チカチカ、チカチカ



ピンクに黄色に緑に赤に。

うざったく光る夜の街を見下ろして、ふうっと煙草の煙を吐き出す。

白い煙が生ぬるい風に攫われて消えた。




視界は澄んだ筈なのに見えるものは汚れたまんま。







ーーーー相変わらず汚ねえ街だなあ、おい。


煩くて臭くて仕方ねえ。声のデカイ馬鹿と自己主張の強い雑魚で溢れてやがる。
それでもまあ、自分達が正義だと疑わない阿呆共が消えただけマシか?



青い龍の消えた街を見下ろして、いや見下して
顔を歪める俺の隣に、フェンスをガシャンと鳴らしながら「奴」がしゃがみ込む。

奴のシルバーの髪は夜でも目立つ。ふわふわと夜風に揺れるそれの間からゴツいピアスがいくつも見えた。


奴は俺と同じ様に下卑た街を見下ろしている。しかし俺とは違い何の感情も映さない目で。






「相変わらず、なんもねえのな。お前は」



そう言うと俺の目をチラリと見てから、しかし何も無かったかのように視線を街に戻した。



「別に、何も無いことは……無い」

「はあ?」



ボソリと呟いた奴の声に対して、俺の声が誰もいない屋上にヤケに響いた。

全くそうは見えねえぞ。いつもと同じ空っぽの目で何言ってんだか。




「ん」

「あ?」

「あれ、」



奴が指さしたのは丁度俺達がいるビルの真下。

たった今始まった喧嘩を見て、奴は僅かに目を細めた。
馴れた人間しか気付けないような些細な変化。しかし普段が「無」の奴にとってはなかなか大きな変化。


こいつは喧嘩限定で反応を見せる。
それ以外はどうでも良いらしい。多分目の前で火事が起こったっていつもの様にぼーっと見てるんだろうな。ある意味怖い人間。


呆れながら俺もその喧嘩を見下ろす。
と、知った顔がいることに気が付いた。







ああ……なるほど。

だからこいつも反応したのか……。雑魚同士なら目に入らねえもんな。




喧嘩は2対5。しかし圧倒的に2が優勢。

あーあ、相変わらず喧嘩を楽しむ兄弟だ。
赤に染まれば染まるほどその表情がイキイキとしてくる。そっくりなナリの兄弟は、喧嘩を楽しむ姿まで鏡で映してる様でいっそキモチワルイ。





ーーーーーーほんと、俺と同じで狂ってる








暫くその喧嘩をぼーっと観戦しながら考える。


この兄弟がいるってことはアイツらがこの街に来てるってのは本当だったわけか……






「ふーん」




いいねえ。






「トラ、楽しそう」



いつの間にか俺を見上げていた奴が、人形みたいな目で言うから、俺はハッと鼻で笑ってからまた煙草の煙を吸い込み、吐き出す。







「おいハナ、遊び相手、見つかったぜ」









まずは挨拶にでも行くか。







「ツルは、元気にしてっかな」






白い煙が遊んで消えた









トラside end.






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