神のスイッチ3【砂の王国・ゴールド】

砂の王国 /孤高の人

翌朝。ガイアは喪服を身に纏い、砂に埋もれた墓地に来ていた。
『モクレン』
急こしらえの墓標にはそれしか記せる事がなかった。

彼の事は何も知らない。
何も解ってやれなかった。

選択肢は一つだったのに、後悔の念が渦巻く。

結論から言うと、ガイアはモクレンを撃った。
電池を外すのではなく、持っていた銃を彼の頭に構え、引き金を引いて、射殺した。
もし、ただ電池を外していたら、手を汚す事もなく、いとも簡単にモクレンの機能を停止させられただろう。
しかし、ガイアは敢えてそれをしなかった。
「モクレン、以前の俺なら、電池人間相手に、電池を外す事を選んだだろう。でも、気付いたんだ。前の俺は、電池人間から電池を外す行為を殺人だなんて思っていなくて、それに罪の意識なんかなかった。だから、俺は自分の罪を背負う為にお前を撃った。殺した。返り血を浴び、手を汚した時、俺は初めて綺麗事抜きで自分を見直せた。俺は人を殺した。人殺しだと実感したんだ。気付いたら、もう、後戻りは出来そうにない」
墓前に膝を着いていたガイアが自嘲気味に笑う。
「墓参りなのに、花を忘れていますよ?」
後ろから声をかけられたが、ガイアは振り返らずに答える。
「Jrか。ちょっと色々と重なって、失念していたよ。でも、墓前に供えるチョコレートなら持って来たんだ」
ガイアはポケットからやわらかくなった板チョコを取り出し、それを墓前に供えた。
「砂漠でチョコレートですか?ホットチョコレートになりますね」
「それも失念していた」
二人は静かに笑う。
「どうぞ」
そう言ってドーガンJrが後ろから花輪を差し出し、ガイアはそれを墓標に掛けてやった。
「Jr、モクレンの妹を保護したい。ちょっと調べてくれるか?」
「罪滅ぼしですか」
「……」
「調べておきます」
「頼んだ」
ドーガンJrは懐からスケジュール帳を取り出し、ガイアの用件を書き込む。
「……そろそろ戻りましょうか。あまり要塞を離れない方がいいです」
パタリとドーガンJrがスケジュール帳を閉じた。
「ミズチか」
ミズチの事は、最初からくえない奴だと思っていた。
「ええ。目を離さない方がいい」
「ミズチに限った事じゃない。俺の失脚を望む者は多い。同族だというのに、足の引っ張り合いさ」
親や血縁者ですら信用出来ないのだ、それが他人となれば尚のこと。
ガイアは膝に付着した砂もそのままに立ち上がる。


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