イベリスの悪魔

悪魔


あれから1週間が経とうとしていた…えれなも大分落ち着いたようで、晃や彼の母親と共に藤山家で過ごしていた。
本当は1日滞在したら自身の家に戻るつもりだったが、自分にもしもの事があったら大変だと頑なに晃に言われ、仕方なくこの家に留まる事にした。
竜二が現れてからというもの、晃の様子はどこかおかしかった。
相変わらず親子2人で毛嫌いしているが、それと同時に彼の場合はどこか竜二を恐れているような…それに自分の行動を監視されている…?えれなはそう感じた。


「ただいま」

「おかえりなさい」

「今日も変わった様子は?」

「大丈夫よ」


変わった様子はないか…家に帰ってくる度そう尋ねてくるようになった。
一度だけ昔竜二と何かあったのかと聞いてみたものの、えれなには関係ないからと何も答えてはくれなかった。
本当はあの写真の女性との関係も聞きたいところだが、怖くて未だに触れられずにいる。


「そうそう、晃さんに手紙がきてたわよ?」


今日のいつ届けられたのかはわからないが、ふとポストを覗くと彼宛ての一通の手紙が…差出人の名前は書いてなかったものの、黒い上等な厚紙の封筒だったため、彼の仕事関係の手紙だろうと思っていた。


「僕に?」


不審に思いながらも彼は封を開け手紙を取り出した。
中から出てきたのは封筒と同じ真っ黒の用紙。
そしてそこには…


「……!?」

「どうかしたの?」

「なんでもないっ…仕事の事だった」

「そう…」

「先に着替えてくる」

「えぇ……」


手紙を握りしめ晃はそそくさと部屋を出て行った。
仕事の事だと言うが、その表情は酷く怯えているようで真っ青だった。


「何なんだよこれっ…」


部屋に戻った晃はやはり怯えており、すぐさま手紙をゴミ箱へと投げ捨てた。
今の彼はえれなの前で平常心を保つのがやっとの状態…竜二が現れたあの日から、彼は毎晩悪夢にうなされていたのだ。
あの7年前の出来事…これまで何とも思っていなかったのに、今となっては思い出したくもない忌々しい出来事となった。
それどころかその件が公になれば全てが終わる…竜二の存在によって平和な日々が崩れ落ちるのは時間の問題だった。
何か打つ手はないかと模索するものの、肝心な竜二の居場所が掴めないためどうする事もできない。
もう一度彼が接触してくるのを待つしかなく、口では関わるななんて言っているが、心のどこかではそのチャンスを望んだ。
だが自分に接触する前にえれなの元へ現れたら?そしてあの事をバラされたら?想像するだけで彼は震えた。
どうしても最悪の事態だけは避けなければならなかった。




  • しおりをはさむ
  • 7
  • 2
/ 45ページ
このページを編集する