イベリスの悪魔

美しき兄弟



「僕がえれなを諦めると思うか?昔から可愛くない義弟だ」

「あんたは最低な義兄だったよ。今更自分の言葉が信じてもらえると思うのか?」

「まさか話したのかっ?!」

「こういう大事な事は話すのが当然だろう…少しずつだがあの子は思い出してる。だからもう諦めて……っ!?」


最悪なタイミングで痛みが竜二を襲った。
しかも先程とは比べものにならないぐらいの激しい痛み…腹部を抑える手にも自然と力が入る。


「悪いが行かせてもらう。病人は大人しく寝ていろ」


スっと立ち上がり冷たい眼差しで自身を見下す晃…絶対にえれなの元へ行かせたくない。
そんな執念だけで竜二の体はとっさに動いた。


「離せっ!」

「わからないのかっ…?お前はっ……あの子に相応しくない…!!」


誰も想像する事のできない激しい痛み…それでも竜二は必死に晃の腕を掴み離さなかった。
自分の身を犠牲にしてまでえれなを…愛する人を守りたかった。


「しつこいんだよっ、お前!」

「えれなは俺を選んだっ!あんたじゃないっ……っ!?」


2人の争いが激しさを増すように、噴水も勢いよく飛び出した。
竜二の体はもう限界…晃に胸ぐらを捕まれ殴られると思い反射的に目を閉じたその時、誰かに体を包まれたような気がしてゆっくり目を開いた…


「えれな…」


晃から自身を庇うように彼女はそこに立っていた。


「ねぇ晃さん…もうやめてよ」

「僕はただ君を迎えに来ただけだ。こんな体の竜二じゃ君を幸せにできない…僕と帰ろう。彼なんかといるべきじゃない」

「あなたとなんか……7年も私を騙してた人なんかと一緒にいたくないっ!」


晃がとうとう恐れていた事が起きた。
そう、ついにえれなは全てを思い出したのだ。
飲み物を買い竜二の元へ戻った時、彼らが言い争っている姿を目撃。
急いで止めなければと足を踏み出した瞬間…彼らの後ろにある噴水が勢いよく飛び出した。
それと同時に竜二に掴みかかる晃…あの時と同じだと…記憶がフラッシュバックして何もかも一気に思い出した。


「嘘だ…竜二に騙さてるんだ」

「竜二さんは私に嘘なんかついた事ないっ!嘘つきなのはあなたよ?」

「えれな…」

「触らないでっ!!それと…もう私達には関わらないで。帰ろう?竜二さん」


晃を残し、辛そうな彼を必死に支え2人は歩きだした。
ついにえれなは竜二の元へ戻ってきた…あの時の忌まわしい記憶と、2人で交わした約束と共に…。



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