世界は彼女の為に回っていたⅡ

「いま、今、一緒に居るの!」


上手く声音がコントロール出来なくて、弾かれる様に声を発した。


『…』


受話器の向こうからは何も返ってこない。雑音すらしない、綺麗な無音。

「もしもし?」


あまりに何の音もしないから、携帯を耳から放して、本当に繋がったままなのか確かめてしまった。


『…から』

「へ?」


携帯を耳に戻すのが一歩遅れた様だ。
一輝の静かな声を最初から、聞き取ることが出来なかった。

けれど聞き返せる雰囲気ではなかった。あたしは何とも言えない空気に、心が押さえ付けられるのを感じ、静に息を飲んだ。


『どこだ?』

「えっと…職員棟の裏側、あっ、ベンチに座って待ってる」

何に緊張してるのか解らないけど、声が変に上擦る。

『あぁ』


電話は切られ、ツーツーと電子音が虚しく続く。
こんな電話初めてだ。最初から最後まで緊張しっぱなしだった。相手は一輝だというのに。

そういえば一輝は、場所を告げた時“あぁ”としか答えなかった。もしかしたら、この場所を知っているのかもしれない。

あたしは一輝を思いながら、女性の方に振り返り、ため息を一つ溢して、諦めてベンチに座った。


一輝が来たのは、それから程無くしてからだ。


  • しおりをはさむ
  • 51
  • 33
/ 340ページ
このページを編集する