世界は彼女の為に回っていたⅡ

学園祭では何かが起こるⅡ /過去との邂逅

携帯を切り、ポケットにしまった。保健室に面した廊下は、人っ子一人居らず、耳鳴りが聞こえそうなほど、底知れぬ静寂が続いていた。


意識を無くしたシカをここに運び、いつの間にか居なくなっていた亜湖は何故か“あの人”と居るし、ナカはナカで呆然と魂が抜けたみたいにシカに寄り添っている。


俺は頭をぐしゃぐしゃと掻き乱し、奥歯をグッと噛み締めた。



自分の立ち位置が見えない。初めは簡単だったのに、どこで違《たが》えた。

どんなに過去を辿ってみても、分岐点なんて有りすぎて、どれが“間違い”かなんて分からない。
分からない事が分からない。


俺は思考するのを止め、ため息を漏らして保健室に戻った。


保健室には、ナカしか居ない。
保険医の紺野さんは“ヒロトさん”に、シカが倒れたことを知らせに走っている。


携帯を使えば…と思うのだが、どうやら“ヒロトさん”は携帯を所持しないらしい。所有しては要るらしいが、持ち歩いてはいないということだ。

携帯は携帯するから携帯なのに…これでは唯の電話だ。


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