世界は彼女の為に回っていたⅡ

学園祭は何かが起こる /不思議な大人達

ほら、と渡された缶コーヒーを受け取り、僕達は緑から黄色に変わり始めた、樹の下のベンチに並んで腰掛けた。



「もう十年か…花菜は元気か?」


椎さんは空なのか校舎なのか見上げて、昔を思い出したのか懐かしむように質問してくる。

「うん、元気。元気」


僕はまだ開けていない缶コーヒーを掌で転がしながら、曖昧に笑顔を浮かべ答えた。


「お嬢ちゃん、さっきは悪かったな。俺は、こいつの姉貴の“花菜”の同級生でな、こいつがこんなちっちゃい頃から世話してやってんだよ」


そう言いながら、人差し指と親指で“小さい”の度合いを示し、豪快に笑顔を作る。


「そんなに小さい時なんてないよ!」



「ナカには“お姉さん”が居るのか」

「あぁ、太鼓判押したみたいにそっくりなんだよ。一度、遊びに行ってみるといい。お嬢ちゃんもビックリするから」


しかちゃんは、へーと珍しく興味ありげな反応を示した。


「俺が花菜と出会ったのが、ちょうどお前らと同じだから、ナカはまだ三才だったな」


しかちゃんが、もぞもぞと動き椎さんの顔を覗き込んだ。


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