世界は彼女の為に回っていたⅡ

学園祭では何かが起こるⅡ /現れた車椅子の女性


…――ナカがキレた。


微塵も予想すらしていなかった光景に、あたしはただ傍観者でいるしかなかった。

ナカと“友達”になって約半年、初めて目にした“怒り”にただ呆然としていた。


…――どうすればいい?

…――どうしよう?


そんな戸惑いすら起きないほど、あたしは眼前でキレるナカに思考を止められていた。

窓の向こうは、まるでブラウン管の映像を見ている様だった。
触れない、介入出来ない、そう全ては向こう側で起こっていること。


…時が、止まって見えた。


「行くぞ、アコ」


無防備に垂れ下がった手が、パシリと乾いた音と共に掴まれた。
外気よりもひんやりとした感覚に、心臓が跳ね上がった。

…――時が動き出した。

呼吸することさえ忘れていたあたしは、生まれたての、ひなの様に酸素を貪った。


「ポチの所に」


温もりを一切感じない冷たい手に、安堵をした。
志佳が居るから呼吸が出来る。



“友達”が居るから“友達”を救える。


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