朽ち果ての王と宵闇烏 - 壱 -【完】

白く輝くあの庭へ。
帰りつくまでの道程のことは、あまりよく覚えていない。

ただ静かだったような気がする。
隣に並ぶ羽衣も、影のように従う善も無言のまま。

早く帰りたくて、でも最早駆ける気力もなくて。
ぼんやりと深い夜の闇を見やりながら、足を交互に踏み出す。
そうして気がつけば、叫び出したくなるほど懐かしい、あの真珠色のカーテンが揺れていた。

「姫様……?」

カーテンを目前に足を止めた私を、善が不思議そうな顔で見つめている。
それはそうだろう。
ここを抜ければ、そこは謂わば私達の安息地。
何の脅威もない場所。

何より、どうしたって分かってしまう。
この向こうには、十季がいる。
私の帰りを待つ十季が。
だからこそ――無意識に足が止まってしまったのだろう。

「……何でもない」

嘘つき。
口ではそう返したって、本当のところは別。
反射的に心の中で呟いたけれど、それに善が気付くことはない。

そして、真珠色のカーテンが開けば、そこには。

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