0と1のあいだ【完】

1.0 想い

なかなか浮上できないまま、気付けば入学式前日になっていた。



那由多からは度々メールや着信があったけど、やっぱり見れなくて、

無視という最悪のかたちで応えてた。



この数日は寮の部屋で本を読んだり、仲良くなった美加と話したりして過ごしてる。

今まで休みの日にほとんど家にいたことのない私にしたら、これは末期かもしれない。

那由多は今日も“京子先生”に会いに行ってるのかなとか、そんなことばかり考えてしまうと出掛ける気になれなかった。



こんなことなら、美術部なんて勧めなければよかった、なんて思う自分も嫌いだった。



だからといって、いつまでもうだうだしてる訳にいかないのもちゃんとわかってる。

推薦入学の私は入学したらすぐ部活だって始まるし、勉強だって頑張らないといけない。



実は授業のレベルも割りと高めの高校だから、油断できなかった。



今日の内に準備を済ませておかなくちゃ。

やる気のでない身体になんとか気合いを入れて、リストをチェックしていく。



あと少しで完了というところで思い出した。

しまった、文具を買っておくの忘れてた。



私は大きな溜め息をつくと、仕方なしに買いに出掛けることにした。



バスを降りて文具店の入った複合ビルに向かって歩き出す。

数十メートル歩いたところで、突然後ろから声を掛けられた。



「あ、おい、あんた!」



不振に思いながらも顔だけ向けてみる。

と、そこにいたのは、



「えと、やなぎ、だ君?」



那由多の友達、柳田君だった。

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