波涛(はとう)の月

「看護婦さん、いつもありがとう」


両足を切断する重傷を負い傷口から感染をおこし高熱にうなされている兵士からお礼の言葉であった。


「包帯の交換くらいしかできなくてごめんなさい。もう少しで医薬品の補給があるから、それまで頑張ってください」


幸は勤務中は笑顔を絶やさないようにしていた。


満足な治療ができなくても患者に生きる希望をもたせるために笑顔だけは忘れないことが幸の従軍看護婦としての使命であるとおもっていた。


「そんな気休めはもういいですよ。私はもう駄目だから、それより、私の話を少しだけ聴いてください」


そういって、彼は一枚の写真を幸に手渡した。

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