眠り姫は夜を彷徨う【完】

街の掃除屋

漆黒の闇の中をひとり歩いていた。


ただ、ひたすらに足を前へと運ぶ。

何故自分は歩いているのか、とか。

いったい何処へ向かっているのか、とか。

自分でもよく分からなかった。


惰性で歩いているだけのかも知れない。

でも、足を止めてしまうと闇に包まれて自分という存在が消えてしまいそうで。

ただただ怖くて、踏み出す足を止められずにいた。


気が付くと周囲を何者かに囲まれていた。

自分に向けられる不快な視線に、無遠慮に纏わりつく腕。

顔や姿形はハッキリしない影のようなのに、その感覚だけは妙にリアルだった。

それらを全てかわして払い除けていると、今までの『揶揄』が鈍い自分にも判る程の『敵意』へと変わっていく。


『奇遇だね。私もあなた達みたいなのは嫌いだよ』




「ふああぁ…」


いつものように二つに分けた長い髪を黙々と編みながら思わず欠伸が漏れる。

何だか無性に眠かった。

(昨日もわりと早めに布団に入ったハズなのになぁ)

気持ち身体も重たい感じがする。全然疲れが取れていない。

(身体、冷やしたかな?)

布団を蹴飛ばしたりしていたのだろうか?朝起きた時には、きちんと掛かってはいたけれど。

それに…。

(何か、夢を見ていた気がする…)

内容までは覚えていないけれど。


時計を見ると、あと五分でいつも家を出る時刻だった。

紅葉は小さく息を吐くと編み上げた髪を素早くゴムで留め、気合を入れるように立ち上がった。

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