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朝8時。

私は自然と目を覚ます。

体を起こし、ベッドのそばに立て掛けてある杖を手に取った。

車椅子生活が終わり、杖を使えば歩けるほどになったのだ。
毎日のリハビリの成果が出てすごく嬉しい。



私はゆっくりと歩みを進め、蒸気浴室に入る。
顔を洗い、着替えを済ませた。

…服は、基本真っ白なワンピース一択だけど。



杖を頼りに向かった先は、あの真っ白なピアノ。

慎重にその立派なピアノに触れながら、椅子に座った。


指をならしてから、私は鍵盤に手を置く。


一息着いてから、私は指で鍵盤を叩いた。






…ショパンのピアノソナタ2番第一楽章。


難易度Fのこの曲を弾けるようになったのはつい2日前のこと。

それが嬉しくて私は何度もこの曲を繰り返し弾いていた。短調の曲だから明るい曲ではないのだけれど。


朝起きてピアノを弾くことが、私の日課だったことを思い出した。

それを実践できるようになった今、私はやっと人としての生活が許された気がしていた。


…これぐらいのこと、許されるよね?
私だって、好きなことをしていたいもの。




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