彼女の体内昼寝時計。[完]

04 /小さな兎と大きな虎






だが、それを俺が口にしたところでこの事態が変わる訳ではなく、その日は家に帰されてしまった。


『よし、今日の所はもう帰りなさい、』


俺の言葉を聞いた警察官は、何故か笑顔でそう言って俺の背中を押して来たが、結局家に帰っている今でもその意図を汲み取る事は出来ていない。


不思議な人だとしか思えていなかった。

獅季はというと、あれから顔を合わせることなく、俺だけが警察署を出て来たが、本当にこれで良かったのだろうか。



事情聴取をされた時、アイツは一度も俺の名前を出さずに全て自分がやったと自供してその場を去って行った。俺だって獅季を殴ったのに、それを自供したら獅季がそれを否定して、俺は罪に問われなかった。

その所為で、複雑な気持ちが心に残っている。




それに、一番気になるのは俺を殴らなかった獅季が見せたあの表情。

酷く悲しそうな顔が、頭を過ぎる。

どうしてあの時、獅季は俺を殴らなかったのか。

一瞬だけ見えたあの表情がとても気がかりで、ずっと引っ掛かっているのに、そんな疑問を抱いたまま、俺は警察署から出てきてしまった。



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