彼女の体内昼寝時計。[完]

04 /彼女の幸せを願う人々




柊side




安心して抱き締め合っている二人をその場に置いて、俺は親父と一緒に書斎室へと入る。


「お父様、」

「…」


慣れない敬語は嫌いだが、まぁこれも社会勉強として自分の人生に役立つと考えよう。

黙っている親父は、スーツの胸ポケットから小さなロケットを取り出してそれを開く。

中の写真は、俺と兎の写真。



「愛とは、難しい物だ」

「…、」

「お前の事も、私は愛してやれてなかったな…」

「…、」



それを眺めている親父の瞳は寂しげに揺らいでいる。

愛していた女に裏切られて、その女に復讐する為に引き取った子供を自分の子供としていつの間にか愛してしまった悲しい男。

厳しいと言われていたその人格も、娘を愛し始めた途端に絆されてしまった。

それが、親父だ。

一人の親として、最後は妹の幸せを願ったらしい。



「跡継ぎは、俺がします」

「お前には家族が居るだろう。そっちを優先しなくて良いのか?」



俺の言葉に揺らいだその瞳を向ける親父は、疑問そうに問い掛ける。

その口から出て来た『家族』という単語に、目を伏せて俺はこう言った。



「もう家族には別れを告げましたから」



全ては一人の妹の為に。

俺はこの家を継ぐ一人息子としてここに残る。



「柊…」

「これから、よろしくお願いします。お父様」



写真に囲まれた中で、俺はそう言った。



柊side END



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