よみや高校怪奇倶楽部〜こわがりな先輩と最強守護霊憑いているちゃん〜

第二話 何かがついてくる /その参

 この噂の舞台となっている場所は、夜宮高校の裏手を抜ける緩やかな坂道だ。平坂などと呼ばれ、主に徒歩通学の生徒たちによって利用されている。
 その男子生徒にとっても、平坂は通い慣れた道だった。
 だが、ある日のこと。
 大事な大会を前にいつも以上に部活に熱心に取り組んでいたその男子生徒は、帰るのが遅くなってしまった。
 校門までは部活仲間と一緒だが、そこから平坂のほうを抜けるのは彼だけだ。春とはいえ、夕暮れ時を過ぎると暗くなるのは早い。いつもより暗い道を、少し不安になりながら歩いていた。
 そうやって、不安になったのがいけなかったのだろう。男子生徒はふと、この平坂についての噂を思い出してしまったのだ。いつもだったら、思い出してもすぐに気をそらすことができた。だがその日は時間が遅いこともあって、できなかった。この薄暗い道を、怖いと思ってしまった。
 怖いと思ったのが、いけなかったのだ。男子生徒は、すぐ後ろに何かがついてきているような気がした。噂の通りだ。これが噂の“何か”なら、捕まってはいけない――そう思って、全力で走り始めた。
 男子生徒は陸上部に所属しているため、足には自信があった。得意とするのは短距離走だ。今度の大会だって、いい記録を出すとコーチに期待されている。自慢の足なら、追いつかれるわけがない――そう思った。
 だが、そんなふうに思った途端、噂の続きを思い出したのだ。“何かわからないもの”に追いつかれてはいけない。もし追いつかれたら、大切なものを奪われてしまう、と。
 思い出して、自分の大切なものは何だと考えてしまった。考えて頭に浮かんだのは、この自慢の足だった。
 その直後、男子生徒はバランスを崩して転んでしまった。そして――。
「いやだ!」
 足を何ものかに掴まれ、思いきり引っ張られてしまった。

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