よみや高校怪奇倶楽部〜こわがりな先輩と最強守護霊憑いているちゃん〜

第三話 よそみはだめだよ /その壱

 人間の思いの力というのはすごいもので、信じることで何もないところに何らかのものを生み出すことがある。
 神仏などの信心も、元々はそういった側面を持っている。信じるものには加護がある、信じる者は救われる、といった言葉にもあるように。
 そうやって人間は自らを守ってくれる存在を作り出すこともあれば、恐れや迷いから害ある恐ろしいものを生み出してしまうこともある。信じる心、いないはずのものをいると思い込む気持ちというのは、何かを生み出す力を持っているということだ。
 その力によってわざわざ得体の知れないものを生み出す人間もいる。その一例が、タルパと呼ばれるものだ。
 本来は、チベット密教における幻影を具現化する技術だったものが、人工未知霊体を作り出すものとして広まったものだ。
 人工未知霊体とは、読んで字の如く人が作り出した霊体のことだ。つまり、無から霊体を作り出すというもの。
 タルパの話が広まり始めた最初の頃は、上手に作ると守護してくれたり遠方にいる誰かにメッセージを届けたりできるものだとされていた。アニメや漫画で描かれる陰陽師の式神に近いイメージかもしれない。
 それがいつしか“理想の友達”を作る方法だったり、“理想の恋人”を作る方法だったりと形を変えて流布するようになった。“二次元の嫁を画面から出す方法”などとして話題にされることもあった。
 それだけ、ここにはいない、架空の存在を自分のそばに呼び寄せたいという人間が一定数いるということだ。
 インターネットの海を漂っていると、実際にタルパを作り出して一緒に暮らしているなどという人の話を見かける。にわかには信じがたいが、その何割かは本当に何かと暮らしているのだろう。
 それが目論見通り無から理想の存在を生み出したものなのか、近づきてきた何かに理想を押しつけて縛ったものなのか、わからずにいる者もいるに違いないが。

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