よみや高校怪奇倶楽部〜こわがりな先輩と最強守護霊憑いているちゃん〜

第五話 いるよ /その弍

***

 定期考査の最終日の放課後、駿は人通りの少ない廊下で源の話していた。
 盛んな部活であれば今日から活動再開なのだが、郷土研究会はまだ休みだ。急いで再開させる必要はないし、そもそも毎日何をやっているのかと思われているだろう。
 部活は休みだが、駿は源と話しておきたいことがあったため、人目を避けて立ち話をしている。

「あれから天文部員たち、どんなですか?」
「察しがいい子たちだったみたいだから、深追いはしないんじゃないかな」
「そっか……俺んちに泊めたときに釘を刺しといたんで、大丈夫だとは思ってましたけど」
「教室での様子を見る限り、山で見た変なもののことは忘れてそうだよ。彼ら、本当に星が好きだから」
「みたいだな。俺をそっちの趣味に引き込みたいらしくて、夏の星を見るキャンプとかに誘うメッセージを送ってくる」
「お、いいじゃないか。小幡くん、友達いないんだし。学年が違っても、仲がいい子がいるのはいいことだ」

 真面目に怪奇クラブとしての報告や情報交換をしようとしていたのに、源は駿の高校生らしい話を聞いてほっこりした顔になる。駿の事情を知っていて日頃から面倒をかけてしまっているから仕方がないが、源は時々かなり保護者モードになる。

「そんなことより、先生はあの山にいるやつ、何か見当つきますか? 俺はこの近隣の噂とかネットで探ったんですけど、何もヒットしなくて」

 駿は脱線しかけた話を、やや強引に戻した。本題はこっちだ。
 あの日は逃げて安全を確保するのに必死で、何かわかったわけではない。また同じことがないとは言えないのだから、講じられる策があるのか考えておく必要がある。

「僕もいろいろ調べてはみたけど、類似した話は見つからないね。灯りと声の組み合わせっていうのが、結構斬新かも」
「斬新かもって……最初は『おい、おーい』って言ってたのが、あとで聞いたら『フーッ』っていうのに変わってたんですよ。たぶん、俺らが逃げるときに出した声の真似だと思う」
「声真似か……」

 あのときのことを思い出して、駿は背筋がぞわりとするのを感じた。
 得体の知れないものがワケのわからない雄叫びをあげているはうがいくらかマシに思える。声を、言葉を真似るたいうのは、言い知れぬ不気味さがあるように感じるのだ。だから駿は見た目は可愛いと思っても、インコのような喋る鳥や、こちらの喋った内容を録音・変換したのちに再生する真似っ子系のぬいぐるみが苦手だ。

「山にまつわる怪異って、実はいろいろいるんだよね。その中でもよく聞くのが、猿にまつわる話なんだ。そのせいかわからないけど、古くから生活の営みの中で山に入るような機会があるような人たちは、山に入る日には“猿”という単語を発しないよう注意していたんだって。もし誰かが言ってしまった日には、山に入るのを中止するっていうくらい徹底していたらしいよ。そのくらい、猿を不吉なものだと考えていたんじゃないかな。そして山に入ったら極力喋らない、喋るにしても里の言葉を使ってはならないと決めていたらしい」
「へ、へえ……」

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