よみや高校怪奇倶楽部〜こわがりな先輩と最強守護霊憑いているちゃん〜

第五話 いるよ /その肆

「そんなことより、源先生のクラスの例の女子は落ち着いたんですか? コトラがやっつけたのは見たんですけど、一体何が何だかわからんかったんで」

 そういえば、と駿は琴子と一緒にいる女子のことを思い出した。背中に禍々しいものを背負っていたが、駿はあれが何なのかさっぱりわからなかった。そういうものに詳しいとは決して言いたくないものの、あんなものはこれまで見たことがない気がする。

「成瀬さんは、落ち着いてるね。というより、例のことがある前より、今のほうが生き生きしてるかな。男虎さんと仲良くなったのをきっかけに交流の輪も広がったみたいだし」
「へえ、よかったな。じゃあ、あのとき運悪く変なもんに憑かれてただけ?」
「いや、そういう単純な話じゃないみたいだ。授業中に錯乱したってことでスクールカウンセラーのところに何度か行くよう言われてて、成瀬さんは渋々行ってたんだけど、何回目かのときに『友達がほしくて、理想の友達を作るおまじないをしました。今は普通に友達がいるので、二度とそんなおかしいことに手を出しません』って言ったらしいんだ。彼女、長々とカウンセラーや担任の僕に心配されてるのが面倒になったらしくて、僕のところにそうやって報告に来た」
「うへぇ……」

 成瀬という女子が何をしたのかはわからなかったが、とりあえずヤバそうなのはわかった。というより、ヤバさしか感じない。おまじないじゃなくて絶対に呪術じゃん、と怯えながら思った。

「それって何ですか? イマジナリーフレンドを進化させちゃったってやつですか?」
「いや、そんなものなら成瀬さんは今頃スクールカウンセラーに軽く相談ぐらいじゃ済まなくて、本格的に心療内科での治療が必要だっただろうね。人間にとっての怖いものは、何もオカルトに限った話ではないから。そういうんじゃなくて、儀式的に創ったんだと思うよ。友達を」
「……」

 またしても駿は言葉を失った。「それってどうやるんですか」とか「へぇ。そういう友達の作り方があるんですね」とか、質問もうまい返しも何も思いつかない。

「もしかして小幡くん、その友達の作り方を知りたいって思ったの? たぶん、タルパって呼ばれるものだと思うけどね。そんなに思いつめなくて大丈夫。君はひとりじゃないよ?」
「いや、知りたいと思ってないし、さらっと教えてくるの嫌だし、人の心をえぐらないでほしい」

 源に怖いこととひどいことを言われて、駿は思わず顔を覆った。タルパだとか何だとか知りたくなかったし、友達がいないことに触れてほしくなかった。やはり、この眼鏡教師はドSにちがいない、と駿は思う。

「成瀬さんはまあ、今後何があっても大丈夫なんじゃないかな。男虎さんが友達だからさ。彼女自身が明るくて社交的でいい子だし、彼女の後ろにいる存在が強いもんね」

 駿を落ち込ませてしまったことに気づき、源はさりげなく話を締めくくった。琴子と、彼女の後ろの存在の話題が出て、駿は「うーん」と考え込んだ。

「確かにコトラの背後にいるのは強いですよ。でも、いつでもどこでも役に立つかどうかは……ちょっとわかんないですね」
「というと?」
「判定がガバガバなんです。近くに危険なものがきても反応しないときもあるし、かと思えばコトラが張り切ると即座に反応するし」
「なるほど。僕の後ろの空気清浄機とは、またタイプが違うんだね」
「空気清浄機って……」

 源が自分の背後の有り難い存在を空気清浄機呼ばわりするのを、駿は複雑な気持ちで聞いた。こんな得体の知れないものが見える目があるなら、危険なものから守ってくれる何かもセットでほしかったと思ってしまう。

「とにかく、コトラは何も見えない上に好奇心旺盛だから気になるものにはガンガン近寄っていく。ヤバイもんに近づいていって後ろのものが確実に倒してくれるんならいいけど、後ろのより強いのに遭遇したら……って考えると心配だ。だから、万能扱いは考えもんだと思う」

 琴子のこれまでの様子を振り返って、駿は言った。確かに彼女の後ろの存在はそこにいるだけで圧を感じさせるほど強力なものだが、何もしないときは本当に何もしない。できることならこの学校にはびこる有象無象を自主的に片っ端からやっつけて回ってほしいと、駿は思っているのだが。

「そうか……彼女に任せきりはいけないし、あまり無防備でいるのもよくないってことだね。小幡くん、ちゃんと先輩として心配してるんだね」
「いや、別に、そういうわけじゃ……」
「本当に、いい先輩だと思うよ。天文部にもなつかれてるしね」

 源に冷やかされるように言われ、駿は少し照れた。だが、本当にそんなことではないのだ。
 自分も怖い思いをしたくないし、誰にも怖い思いをしてほしくないだけだ。
 だからこそ、自ら進んでオカルトに首を突っ込む無責任なやつが嫌なのだ。

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