漆黒の白雪姫【上】【完】

7 /動き出す女豹

side


カツカツカツカツ


静寂に包まれた夜の公園に響くハイヒールの音

ある人物と取引を為るためにここに、ワザワザ足を運んでやった


…この私がよ?


あの、大瀧麗奈がこんなチンケな公園にまでワザワザ足を運んでやったんだから、シッカリ仕留めて頂かないと


そして目の前には、その相手がベンチに座っていた


「貴方が音無さん?」


私はベンチに座り、タバコを咥え夜空を見上げる彼に声をかけた

そしてジロリとその鋭く黒に近い蒼い瞳を私に向けたが、すぐに視線を逸らした


…あら、結構いい男じゃない?

クスリと笑って私は彼の隣に腰掛ける


「…で?」


タバコを地面に落とし足で揉み消した彼は、面倒そうに私にそう聞いて来た


私は彼の腕に抱き着き胸を当て、上目遣いで彼を見上げる

…ふふ。
大体の男はこれで落ちるのよ

男は顔と体と甘い言動で、誘惑すれば簡単に落ちる単純な生き物

女みたく、恐ろしい生き物ではないのよ?



「…貴方、漆黒の白雪姫が欲しいんですって?」


私のその言葉に彼の眉がピクリと揺れた

そして、私は話を続ける


「実は私、九条桐斗様に恋しているの

どうしても欲しいのよ。私程のいい女、あれ位最上級な男じゃなきゃ釣り合わない」


そうでしょ?
私はどんな女より…姉よりもいい女なのよ

「…で、私は桐斗様を

貴方は白雪姫を


どう?私と手を組んでそれぞれの欲しい物を手に入れない?

貴方にとっても、悪い話じゃないわよね?」


私は彼の頬に手を伸ばし、あれから一度もこちらを見ない彼にこちらを向かせた


そして、顔を近付け唇が着くか着かないか位の所でピタリと止めた


「どうかしら?」


妖艶に笑って甘く誘う

これで、男は簡単に堕ちるのよ


なんてったってこの美貌に、振り向きもしなかったのは桐斗様だけ



ふふっと笑う私








「離せ」









だけどその彼の低い声によって、私の妄想は消え去っていた



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