漆黒の白雪姫【上】【完】

弥生はあの餓鬼が優しい奴と言うが


本当は誰よりも優しいのは弥生だ



拠り所のない奴を包み込み、信頼し、大切にする

大事な仲間の為ならば、己の身の危険も気にせず突っ込み、体を張って守る



『人が傷つくのが嫌ぇなんだ』




弥生達が九条にやって来て間もないある日、ちっせぇ組を潰した時にウチの組員に刃物を突きつけた野郎がいて、それを見つけた弥生はそいつに突っ込んで行った

弥生は腕を少し掠ったが、庇った組員に怪我が無いと知ると嬉しそうに笑っていた


当時女禁制の九条には、俺を始め女嫌いな奴が多かった
それでやら、女が組員になると聞いて反発する奴らも少なくなかった


その弥生が庇った組員もその1人
腕から血を流しながらも、その組員の無事を見て笑った弥生を見て組員は驚きを隠せなかったそうだ


俺が知らねぇと思って、女にはキツそうな仕事やら卑猥な言葉を発したりしていたらしいが、弥生はそんな事ではへこたれず、悔しがっていたそう


それを知っていたのに弥生は奴を庇った


『怪我ないっすか?
なら良かったー!んじゃ、私は戻るんで!』


そう言ってまた怒号と破壊音が響き渡る事務所へ消えて行った弥生を、ただ呆然と見ていたあの野郎の背中に、蹴りを入れてやったのは言うまでもない


それを見ていたり、弥生の働きっぷりに心撃たれた奴らは、すっかり弥生に懐きやがった


今じゃ九条になくちゃなんねぇ人物の1人になった





だから、もし音無を初めとする叔父貴や皇夜が弥生を狙っていても、うちの野郎共は間違いなく弥生を守るだろう


弥生がそう仕向けたのではなく、弥生の人間性が人情熱いウチの野郎共の心を掴んだ


前に座る甲斐やマサもその1人


特に甲斐は、俺の代わりにジンの弥生と面識があったから余計かもしれねぇ


『弥生なら桐斗も全然平気だと思うぞ?』


女を信用していない俺を一番知っている甲斐が、弥生と初めて会った時にそう言ったんだ



だから弥生



辛い時はもっと頼れ


俺だけじゃねぇ


認めたくねぇがお前を思う奴らはたくさんいるんだ


疲れたのか、俺の胸に顔を埋め眠ってしまった弥生の髪を優しく梳いた



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