Help (完)

第一幕:狼と出会った /赤い瞳の獣






──真っ暗な空だ。まぁるい月だけが輝いて星は見えない。

まるで、真っ黒な画用紙に白くて丸いビー玉を置いたみたいだ、なんて思う。




傍の道路はクラクションの悲鳴で溢れていて、帰宅を急ぐ社会人のせいで渋滞した車の群れは一向に動かない。





学校指定の灰色カーディガンのポケットに手を突っ込んで、短い紺色のスカートの裾をひらひらさせながら、1ミリも動かない排気ガスだけを撒き散らす車を何台も追い抜いた。

下手にバスに乗るよりも、歩いた方が絶対に早い事は目に見えて分かった。





ポケットに突っ込んだ右手でウォークマンのボタンを手探りで探し、押す。クラクションがうるさいせいで大好きな曲の大サビが聴こえにくかったのだ。

気付けば音量はMAX。音楽以外何も聴こえない。自分の声でさえ、聴こえがたい。




やかましいクラクションも、あっという間に音楽に飲み込まれた。









────それが命取りになるとは思わなかった。






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