Help (完)

第七幕:しょうぶ /拗ねてるの!




「華凛ちゃんきいたよ! 昨日『太陽』に拉致されたんだって?」


「え? ああ、うん」




バイトのあと節南さんの家に行くなり心配そうに声をかけてくれたのは衛藤さんだった。

赤いソファーに招かれて頷きながら返事をすると、お決まりのように右に衛藤さん左に佳那汰ってポジションになる。




「まー、無事で良かったじゃんか、華凛」


「うん。何事もなかったし」


「でも油断しちゃダメだからね!? 『太陽』には、俺等あんまり手ぇ出せないから」




私の足元に座って潤んだ瞳で見上げてくるわんこは、ゆきくん。

どこから持ってきたかわからない白いクッションを抱きしめる彼が可愛くて、思わず金髪をなでると気持ちよさそうに目を閉じていた。……本当、可愛い。



「大丈夫だよ、たぶん。それにマシロくん、そんな悪そうには見えなかったし」


「油断大敵!」


「いたっ!」




佳那汰にデコピンをくらってしまった。

……痛い。




「うー。暴力反対ー。暴力者にはケーキあげないんだからー」



バイト後買ってきたスイーツであるケーキをチラつかせる。



「え!? うそうそ! ごめん、華凛! ほらっ、痛いの痛いのとんでけー!」




慌てたように言った佳那汰が、私のおでこを撫でて大声で叫ぶ。



「プッ! こどもじゃないよ、私」



思わず笑って見せると「ガキのくせにー」と頬をつつかれた。

心外だ。私も佳那汰も同じ高校2年生なのに。




「じゃあ、大人用?」


「ひゃっ!」


「……色気無い声。華凛ちゃんはこどもだね」



ちょっと! 衛藤さんまで何を言うの!

てか、ナチュラルにおでこにチューしてきといて何なんですか!? びっくりしますよ、それは。



ぱっと両手でキスされたおでこを押さえて衛藤さんを見つめると、彼は微塵も反省してないみたいにぺろっと舌を出してみせた。



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