コタエナイトイ (完)

第一幕 /「帰る」






ぶわっと音を立てながら私の髪をさらう風が、首筋に滲(にじ)む汗を吹き飛ばしてくれた。


心にある余計な感情も吹き飛ばされている気がした。






「……ここから飛んだら、今より楽になるかな?」








願望は意図せずとも口から漏れる。



おへその高さまでしかない白い塗装のはげた細い柵に手をかけて眼下の街を見つめた。

キラキラ光るネオンは眩しいぐらい光り輝いていて、「遠い」と思った。





柵を乗り越えて狭い“向こう側”に足をつける。





思ったより高くて、真下を見ることはできない。






「飛び降りたら何か変わる?」




キラキラ輝く世界に私も行けるだろうか。





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