コタエナイトイ (完)

第六幕 /「ばか」






屋上に彼はいなかった。



茜が入院したって言ってたし、さすがに彼も病院にいるのだろうか。





ゆっくり白い柵に歩み寄り、乗り越える。




古いビルのせいで柵は胸下ほどなため、乗り越えるのはすぐになれた。


“向こう側”に行くのはもう何度目かわからない。




でも、1回も落ちれた事はない。








両腕を広げる。




まだ青空は健在だ。




照りつける太陽も、にじみ出る汗も、夏を私に実感させてくれる。






目を閉じた。



瞼の裏には茜の顔。








……落ちれない。

後悔ばかりで、全く幸せでない私に今落ちる事はできない。


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