コタエナイトイ (完)

最終幕 /『10月29日!』





8階分の階段を上がると体がポカポカしてちょうどいい。




でも屋上へつながるドアを開けた瞬間、ぶわっと冷たい風が襲ってきて肌寒い。







彼は、こちらに背を向けて、“向こう側”で両腕を広げて立っていた。







「麻斗?」



声をかけるとゆっくり腕を下ろして振り返る。




「胡羽」



その、名前を呼んでくれる瞬間が、私は大好きだ。




「どしたの、そんなとこに立って」


「ん。なんか前に胡羽が立ってるの思い出して、立ってみたくなった」


「気持ちいいでしょ」



彼は苦笑いで柵を乗り越えながら「怖ぇよ」っていう。



「弱虫ー」


「んなことねぇし」



ぐしゃりと頭を撫でられる。




大きなその手も好き。


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