天使を殺したあたしは。(完)

第五幕 /色恋






────あたしは、ナギから受け取った鍵の事を、橙馬さんには言えずにいた。

何で、と訊かれてしまっては答える事はできない。



ただ、話してしまえば鍵は捨てられてしまう気がして嫌だった。




だから、何もなかったふりして、また毎日のように橙馬さんを送り出して、出迎えて、一緒に眠る日々。











時折、彼が寝言で「杏珠」と呟いた。

それを聞くたびに、あたしはこの人の元を離れる事は出来ない、と改めて思えた。





だから、この鍵をつかってはいけない、と。ポケットの中に隠した鍵を握りしめる。

チャリッと音を立てたそれが、あたしのココロの鍵になってる事には、気づかないふりをした。





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