天使を殺したあたしは。(完)

第五幕 /疑惑






────あたしは、その日から、自分に誓った通りに、部屋から出なかった。

菜月とは毎日電話して「駄弁ろうよー!」って喚かれるけど、ナギや璃都さんがいつ現れるかもしれないコンビニになんて行けるはずない。






引きこもるあたしを心配する橙馬さんだったけど、笑ってみせると寂しそうな顔で「行ってきます」を言う。












部屋にひとり。何をするでもなく、時々、掃除機をかけたりする。

橙馬さんの家は2LK。広くて、物がない、シンプルな部屋だからこそ少しのごみでも目立ってしまうのだ。









──それを見つけたのは、本当に偶然だった。

真っ白な特攻服。『天上天下 唯我独尊』の刺繍にべっとりと付着した茶色っぽい染み──




見た瞬間、ドクンッと心臓が脈打って、そして涙があふれた。

これは、あたしがあの日、落とした特攻服。

これを橙馬さんに届けて、彼はその場でこれを着て、一色街をまとめ上げた記念の集会をする予定だった──





天使の死で集会はなくなり。

その後、彼が本に一色街のトップとしてみんなの前に現れる事はなく、街から去ったとだけ噂が流れた。

他人(ひと)は「岸橙馬は街を捨てた」とか「オンナのせいで潰れるみっともねぇ人」なんて言ったりもして。彼の名は地に落ち────間もなく『Ange』ができたのだ。




今では一色街のトップ=『Ange』リーダーみたいに言われてるはず。





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