天使を殺したあたしは。(完)

最終幕 /事故






────一色の街に帰ってきたのは、ここの人間ならあたしを追い詰めてくれると思ったからだ。





あの、橙馬さんとの一件で、あたしは自分の家に帰ってひたすら彼の言葉の意味や感情の移りを考えたけど、なにひとつ理解できなかった。

ただ、なんとなく感じ取ったのは、彼にあたしはもう不必要になって、あたしはあたしを殺してくれる人を失ったって事。





あたしを恨む人間から逃げて美星街に来たくせに、今更あたしを恨む人間が──あたしに罪を認識させてくれる人間がほしいと思って。


ふらっと家を出て、無意識に天使の特攻一番機にエンジンをかけると、半日かけて一色の街に戻った。





北のその街は、もうクリスマス一色。

街を歩けばジングルベルが聴こえてきて、何処やかしこにツリーやリース、サンタクロースの姿があった。




おまけに道路の隅には溶けかけた雪があって、ああ、もう初雪が降ったんだと知る。

通りで寒い。……ずっと部屋に引きこもっていたから外の空気に疎かったのも確かだけど……北国のここに、ろくな防寒対策もせずに来て、あたしってバカなのかも。


指先が凍るように冷たくて、凍傷で指先が腐り落ちるって言われても信じちゃいそうな程、もう感覚がない。


ああ、失敗した。コートはおろか、あたしは部屋着のままここまで来てしまった。

Tシャツにカーディガン。デニムのショートパンツに黒のロングブーツなんていう軽装、この街でなくてももう生きていけるわけない。

だってクリスマスも目前だよ?




ああ。あたしのバカ。

なんて思いながら、仕方なく適当なショップに入る。








「いらっしゃいま────え……天使(アンジュ)……?」




しまった、って思った。

でもその時にはすでに店員の目からは大粒の真珠(パール)があふれてきていた。





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