Help Ⅲ(完)

第十二幕:過去の鎖 /こわいよ





「あ、あの、ちょっと……痛い……」




掴まれた手が軋むように痛んだ。

耐えられずに怖々と呟くと、通話を終えてスマホをポケットに突っ込んだ彼の赤い瞳が私を見下ろした。



その瞳は、ゾクッとしちゃうほど綺麗。

でも無表情な顔だったから、すぐに口を貝の様に堅く閉ざしてしまった。

おまけに視線まで地面にそらしちゃって。




いや、だって。

口応えかのようにちょっとした不満を漏らしてしまった事が申し訳なく────というよりも、許されない行為だったように感じてしまって。

申し訳ないというよりも恐れ多い、って言葉の方が合うかもしれない。

何にしろ、彼の鋭いまでの視線に一瞬で萎縮してしまって、慌てて視線を落としたのだ。






しかし、手を掴まれている力はわずかに緩んだから、彼はそこまでこわい人ではないのかもしれない。

と思ったのも束の間、彼が私の手を引く。





「ちょっ……ど、どこへ」


「連れて帰る」




当たり前のようにシレッと言われてしまって、一瞬何を言われたのか分からなくなった。





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