Help Ⅲ(完)





「こわい。不安で仕方ないよ。カーリーがこわいめに合うかもしれない。危険があるかもしれない。でも、俺は、カーリーに昔言われた通り、誰にでも良い所があって、優しさが隠れてるって信じる事にしたから。……だから、今カーリーのそばにいる人間の優しさなんて、俺には微塵も分かんないけど……『羅刹』はみんないやな奴だけど、カーリーがそんなあいつらの優しさを見つけて傍にいる事を平気としたのなら、俺は邪魔しない」





言葉を絞り出すように。時折震えた声は、自分自身に言い聞かせるみたいに、一言一言を噛みしめたものだった。





「俺は、誰よりも、カーリーを信じるから、カーリーが平気って言い続ける限り、手は出さない。だから、どうか……死なないで」






手が髪から離れた。なのに髪の毛は何かで固定されたのか落ちては来なかった。

彼の手が、そのまま私の頬に滑り落ちてきて……間違えた、と言わんばかりにパッと離れた彼の手が、鼻をつまんできた。







「じゃあね、カーリー。どうか、思い出さないで。俺とカーリーの記憶は、きっと、悲しみと絶望しかないから」









ポロッと涙が流れたのは、彼の姿が見えなくなった時だった────








記憶のかなたで、誰かが私を呼んでいたのを思い出した。




カーリーって呼ばれるの、大好きだった。

カーリーっていうのはやけに特別な響きだったかのように思う。





でも、そう呼んでくれた人の顔は、まったく思い出せないの。






────金髪の男は、記憶の池に、沈んだ。






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