Help Ⅳ(完)

第十六幕:裏切りの涙 /進歩



話にひと段落ついて、ソファーに正しく腰掛けた私はようやく来ていたマントとボーダーの靴下を脱いでコスプレから解放された。


そんな私を横目に立ち上がった節南さんは、棚からスマホを取り出し、それを差し出してきた。




一瞬、それが何を意味するかなんて分かんなかったけど。




「持っておけ」


「え……私、スマホは……」




すでに、持ってる。と言いかけて、思い出した。




そういえば、ずいぶんと長い間、私はスマホを手にしていない。

いつからだろう?




記憶を巡ってもなかなか思い出せない。





うーん……。真雪くんと花火大会に行ったときは、持っていたと思うんだよね。

黒猫面の男に出会って、その正体がひーくんだと気付かずに一緒に遊んだ。

あの時、何もしゃべらない黒猫さんと意思疎通をとろうと、スマホに入力してもらってお話ししたんだよね。




あ。その後だ。

ミカちゃんと初めて会って、車から突き落とされて記憶を失った時に、壊れて、それっきり。





ようやく思い出せて、悪いとは思いながらもスマホを受け取った。





「ずっと電源もついてなかったろ、前のやつ」


「……壊れてた」




それだけ呟くと、彼は「ああ、そう」とでも言いたげな顔でそっぽを向くと「不便で仕方なかった」とぼやいた。

もしかして、ずっとスマホに連絡を寄越してくれていた、という事だろうか。……私に会うために?




それじゃあまるで、本当に節南さんは、私だけが特別みたいじゃないか。

なぁんてばかみたいなことを想像してしまって、一気に全身が熱くなった。






って。ばかばかばかばかばか!!

こうして流されるからばかなんだよ、私!


本当、求められることになれてなさすぎて、すぐフラフラ感情が移り変わってしまう。私の最大の短所だぞ。


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