Help Ⅳ(完)

第十四幕:裏切りの連鎖 /迷宮の喧嘩





ぶつかった男を見た瞬間、一瞬で血の気が引いた。

慌てながら頭を下げて早口で「ごめんなさい!」と捲し立てた。




だって、ツンツン立ったトサカみたいな髪の毛に、眉の上に3つ並んだ銀色のピアスが彼を「ヤンキー」って物語っていたから。


夜の闇を思わせる、どこか青っぽい黒の髪をワックスで立たせた彼は私を見下ろすと眉間に皺を寄せた。

弾丸のように鋭い真っ黒な瞳に萎縮して、キュッと胃が縮こまる感覚がした。



両こぶしを胸の前できつく握りしめ、更に深く頭を下げる。





「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」




早口で3回。

これは、やばい。



旅行先でヤンキーに遭遇なんて最悪。




「は、羽柴ちゃん……っ」




背後ではグループの子達が震えた声をあげてるのが聴こえる。彼女達も彼のヤバさを感じ取っているのだろう。



彼がその場に存在するだけで、空気が重くなる感覚。

対面した0.5秒後にはひれ伏したくなる威圧感──




節南さんやミカちゃんとの初対面で感じた以上の「嫌な感じ」が心を侵食していく。





震える唇が、また小さく「ごめんなさい」と紡いだ。





「……」




しかし、だ。

その男は私を数秒見た後にすぐに身を翻して姿を消した。




「っ……」




その瞬間、ヒュッと息を飲んでその場にへたり込んでしまう。

刹那、グループの子達が駆けよってきて「良かったぁ」って、情けない声をあげた。



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