Help Ⅴ(完)

第十八幕:選んだ結末 /本音



「帰りたい?」


「え?」





目の前の男は、たれ目をさらに垂れさせて、胡散臭い笑みを浮かべて問いかけてきた。

歌うような柔らかい声色に気を許しそうになるけど、顔色を見れば自然と気が引き締まるから謎だ。



彼は、私にコンビニで買ってきたお菓子を差し出して首を傾げた。









それは、珍しいことだった。

私を監視する人はみんな話しかけてなんかこなかった。



起きるとミカちゃんが居て、シャワールームに連れて行かれ、全身洗い流され、部屋に戻るとその日監視する誰かが居る。

その監視者は基本、黙ってお菓子をくれるだけだった。




なのに今日は、ソファーに向かい合って座るよう促されたあとに、質問を寄越されるんだから心臓に悪い。





あまりの事にびっくりして、口に含んだシュークリームを吹き出してしまった。

慌てて汚物をティッシュに包んで、まだ咳き込みながら「え?」って訊き返せば、黒髪の男はやんわり微笑みを保ったままもう1度口を開く。






「だから、由良羽叶ひなたの元へ、帰りたい?」


「……」





私の耳はおかしくなってなんかいなかった。

聞き間違えじゃなかった。




びっくりして、呆けたまま口を開けていると、彼はクスッと笑って頬杖をつく。





「良いよ。僕、華凜ちゃんの事逃がしてあげようか?」





胡散臭い笑みを保ったままのその男……衛藤さんは、私を試す様な凛とした視線をくれた。



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