Help Ⅴ(完)

第十九幕:幸せの不安 /信頼





婚姻届の届日を指定して署名したってことは、私達の事を完全に認めてくれたってことなのか、それとも勝手にやってろばかども、と言う意思表示なのか。




分からないけれど、それを受け取って喜んだのは、私よりひーくんだった。




「ふふふ。俺4月1日が誕生日で良かったー」


「ひーくん、嬉しい?」


「もちろん。きっと親族との約束をたがえれば、すぐに誰かが俺達の元に来て仲を引き裂いた後、離婚届にサインさせられるんだろうなぁって分かってるけど、そんな事させないもんね」





ぎゅう、と後ろから抱きしめられながらホットココアを飲む。

時々隙をついて首の後ろにキスして来るもんだからくすぐったいったらありゃしない。




でも、そんな行為も幸せの証って思っちゃうから困るんだな、これが。





「とりあえずカタチだけ、けじめのつもりで入籍しろってことだよね、これは。責任とれるように」


「たぶん、そう、かな」


「あー、楽しみ。あ、母さんがね、」






少しだけ声のトーンを落としたひーくんが、そっと囁くように言葉を紡いだ。





「このまま家に居られても困るから、早いうちに出て行けだってさ」


「……うん」





ひーくんのお母さんは最後まで私達の仲を認めてくれなかった。でも、羽柴の家の決定は絶対だから納得せざるを得ないのだ。

まったく、変な因習に縛られて、めんどくさい。





「ね、ひーくん。保護者のサインがいらない歳になったら、はやく誰も知らない土地に行こうね」


「もちろん。羽柴の家から逃げ切ってやる。約束なんて知るかっての。結婚しちゃえばこっちのもんだ」





夢物語みたいにふわふわした、地に足のついてない空想。

でも、それを想像すればするほど未来が明るく見える。



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