心月の夜想曲 上弦 【完】

月蝕のようにゆっくりと・・・ /十七月蝕

結城さんから2回目の告白を受けて、どう応えればいいのか戸惑ったまま別荘から出た。


そして夕陽に照らされながら帰路に着いた。


その車内は、行きと違って結城さんも私も物思いにふけっていたのか無言で沈黙が満ちていて、結城さんが少々気まずい雰囲気を変えようとかけた洋楽が流れているだけだった。


家に着き、車から降りると結城さんは私を玄関先まで送ってくれた。


「葵さん、今日は付き合ってくれてありがとう。……その、別荘見るためだけに連れ出してごめんね」


結城さんは、おずおずと言った。


その控えめな姿勢を見て、なんとなく結城さんの性格が分かったような気がした。


結城さんは前回もそうだったけど、こうして出かけた後最後に決まったように別れの挨拶を言う。


礼を言って、謝る。



きっと、私に婚約者だけどほぼ結城さんが決めたデートに付き合わせてしまったという気持ちがあるんだろう。



……私は、そんなこと少しも思ってないのに。



天蓋のベッドの上で私に熱い眼差しを向けて告白し、その後『邪な想像をしていた』と冗談交じりに言って私をからかった結城さんと、今の結城さんは別人だ。



まだ今日を入れて3回しか会っていないけれど、どれも本当の結城さんなんだ。



優しい人なんだ……。



……申し訳ないと思わなくてもいいのに、きっと結城さんは私のことを一番に考えてくれているから……。



なのに私は、結城さんといて告白を受けながらもさっきからずっと、ゆっちゃんのことを思い浮かべている。



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