心月の夜想曲 上弦 【完】

月蝕のようにゆっくりと・・・ /十九月蝕

それから、シェアハウスを出てゆっちゃんと電車に乗り、小旅行の気分で8つ先の駅で降りると港街に行った。



5月下旬の海辺は生暖かい風が吹いて、気持ちいい。


ここは、海の匂いがして海鳥の鳴き声が聞こえて、それから幾つかの船が波に揺られながら停泊していて、小さな小屋が点在しているだけの景色が続くとても静かな海辺の町だった。


永遠と果てしなく広がる水面を眺めながらゆっちゃんと堤防沿いを歩いて、浜辺に行った。


休日でも5月の下旬で海開きはまだ先だからなのか、浜辺にいるのはゆっちゃんと私だけだった。


果てしない海と砂浜と空を見ていると、まるでこの空間にゆっちゃんと私の二人しかいないような錯覚に陥る。


……誰にも邪魔されない自由で、ゆっちゃんしかいない空間……。



私はヒールを脱ぐと砂に足を取られないようにゆっくりと歩いて、波打ち際に近づく。


冷たいさらさらの柔らかい砂を踏み締めて、寄せては返す冷たい海水に足先をつけた。


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