心月の夜想曲 上弦 【完】

月蝕のようにゆっくりと・・・ /二十一月蝕


目の前に暗い海が広がっていて、潮騒の音が聞こえた。


檜の香りが充満する檜風呂に、ゆっちゃんが先に浸かっている。


私は浴衣を脱いで全裸になると、フェイスタオルで身体の前面を隠して檜風呂に近付いた。


もう何回も見られているから恥ずかしくはないけれど、一緒にお風呂に入るのは初めてでどこか気恥ずかしかった。


ゆっちゃんは私に気付くと、破壊力のある笑みを向けた。


「入ってください」



「うん……」



私はあまり水音を立てないよう静かに、丁度いい熱さの温泉に浸かった。


微かな虫の鳴き声と、潮騒と、温泉の流れる音だけが響いている。


「どうしてそんなに離れているんですか?」



ゆっちゃんは、少し離れたところにいる私にそう言ってくすりと笑った。



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