心月の夜想曲 上弦 【完】

月蝕のようにゆっくりと・・・ /六月蝕


突然の再会を嬉々としている母に仕切られ、大人の余裕を持った爽やか笑顔の結城さんと、それと正反対に、今の展開についていけず苦笑いを浮かべるしかない私は、奥座敷の方に移動した。


「本当に、立派な男性に成長して。年月が過ぎるのは早いわね〜。ほら、葵も結城さんのこと、“ヒロくん”って言ってよく懐いていたじゃない」



懐かしむ母に促され、私は漆黒のテーブルの前で正座し、向かいに座っている“ヒロくん”こと、『結城 隆廣』のことを見つめる。


生まれる前から、私には許嫁が決まっている、…と教えられてきたから、全く面識のない人だと思っていた。



でも、違った。



小さい時に遊んでくれたあのお兄ちゃんが、婚約者だった。


もちろん、ゆっちゃんも結城さんのことを知っていて、結城さんもゆっちゃんのことを知っているんだよね。



何とも言えない、複雑感が、心の中に芽生えた。





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