心月の夜想曲 上弦 【完】

月蝕のようにゆっくりと・・・ /十一月蝕

家の前で車が止まると、ちょうど母が出先から帰ってくるところで門扉に手をかけていた。



母は車中にいる結城さんと私に気付くと、持っている荷物を持ち替えながらこちらに駆け寄ってきた。



結城さんはドアを開けて外に出ると、笑顔で母に頭を下げた。



「結城さん……?なんで、葵と?たしか今日は会う日ではないですよね?」



結城さんと私が二人でどこからか帰ってきたような光景を不思議に思ったのか、母は訝しげに結城さんに言った。




私は慌てて車から降り、母の方へ駆け寄ると、結城さんの隣に並んだ。



「葵。もしかして、結城さんと今日会うってことを黙っていたの?」



母の鋭い質問は、的確に図星を突いた。



言った方がいいかなって思ったけど、別にお母さん達が必要な用事ではないと思って、両親には結城さんと会うということを教えていなかった。



それとここ一週間、お父さんとお母さん、仕事で忙しそうだったし。




「もう!葵は、なんでそんな大事な事を言わないの?結城さん、今日はどのようなご用事で葵と会ったんですか?」



おそらく、結城さんと私が会ったのは結婚の大切な話をする為だと思い込んでいる母は、眉を寄せて、私に叱りながら結城さんに訊く。




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