心月の夜想曲 上弦 【完】

月蝕のようにゆっくりと・・・ /十四月蝕

結城さんと新居を内覧してから、あっという間に二週間が過ぎた。


季節は春の終わりから、夏の始めに移り変わろうとしている。


そして、ゆっちゃんが親戚の家に行く当日の午前11時頃。


私はゆっちゃんが向かう駅にはいかず、結城さんのクリスタルホワイトのボディの乗り心地が抜群な車に乗っていた。


高層マンションの豪華さに驚きのあまり絶句してしまったあの日、その後ゆっちゃんに『好きではない』と色々と言われ揉めたあの日の夜、結城さんから『見せたいものがあるから、また再来週の日曜に会えないかな?』と、ラインが入ってきた。


もちろん断る理由はないので、会う約束をした。


何も無ければ、きっと何か理由をつけて断り、ゆっちゃんの見送りに行っていた。


だけど、私が泣いても何も言わないくらい、それだけ私に気持ちが無いらしいゆっちゃんのことを、縋るように見送りに行くのは出来なかった。


それに、ゆっちゃんも当日のことは何も言わなかったし。


あれから二週間、ゆっちゃんと私は気まずい雰囲気で、同じ家にいても簡単な話しかせず、互いにあまり接しなかった。


そういうことは、初めてだった。


きっと、ゆっちゃんは話しかければちゃんと応えてくれるかもしれないけど、気まずい私は話しかけることが出来なかった。


それから、ゆっちゃんの口から『好きではない』という言葉が、話をすればまた出てしまうんじゃないかと思って、話しかけるのが怖かった。


微妙に、だけどはっきりと亀裂が出来、気まずいのを除けば、普通だった。


特に、ゆっちゃんは。


普通に私や母と接しているゆっちゃんを見て、私は更に苛立ちさえ覚えるほどだった。


私だけ、気にして、悩んでいるなんて……。


でもゆっちゃんが普通にしてくれているおかげで、気まずい空気を勘の鋭い母に感知されることはなかった。


母は、何も気づいていない。



そのおかげで私は、ゆっちゃんとの事を言えなかった。



母が気付けば、それがきっかけになって言わなければならなくなったかもしれない。




だけど、今日の今日まで何にも気付かれず、母にゆっちゃんと私の事を知られることなく、こうして私は結城さんの約束を優先して、車に乗っている。




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